今回はブルースクリーンになってしまったNintendo Switchの修理をご依頼いただきましたのでご紹介させていただきます。
電源を入れても液晶が一面青く表示されるだけでシステムが起動しておりません。
端末を電源ボタンがある側面側から見るとかなり湾曲しているのがわかります。
Nintendo Switch本体は排熱機能に問題があり、内部に熱が籠りやすい端末です。
CPUに負荷がかかるようなゲームを長時間遊ぶことで本体が熱くなり、籠ってしまった熱により基板と共に筐体も曲がってしまうのです。
また、ゲームの動画配信などを行う方も録画や生配信時に負荷がかかり本体が熱を持ちやすくなる為、上記のような曲がり方をしてしまうことがあります。
ブルースクリーンになってしまうと大切なデータを失ってしまうことになりかねないのでNintendo Onlineのデータお預かりサービスを利用されることをお勧めします。
以前記事にしたNintendo Switchのブルースクリーン修理の修理方法はメモリチップのリボールでしたが今回はCPU部分の故障でしたので改めて記事にしました。
ということで早速修理していきます。
※当記事を読んで作業の真似をされて、万が一製品が故障したり、
不慮の事故が起こっても私は責任が負えませんので全て自己責任でお願いします。
以前の記事でも書きましたがブルースクリーンになってしまう原因はCPUもしくはメモリチップを溶接しているはんだ部分が溶接不良を起こしてしまったり、回路が剥離して正常に導通しない状態になってしまうことだと言われております。
基板が曲がることで溶接されている部分にひずみが出てきて溶接不良となったり回路が剥離してしまうのです。
今回はこんなに基板が曲がってしまっているのでCPU部分の故障が原因かと予想し、CPUを取り外して回路の確認を行っていきたいと思います。
準備するもの
- 余程特殊なネジが使われていなければこれがあれば大抵の端末は分解出来ると思います
- フラックスの除去に使います
- もちろん100均のもので十分です
- フラックスの除去に使います。
- 残れば掃除などに使えますが必要なければ小容量のもので大丈夫です
- こて先の温度が上がる速度が早く使いやすいです
- 土台に重量がありはんだごてを置いても安定します
- コンパクトで作業しやすいです
- 液体のフラックスとは違い蒸発しにくくはんだ付けが容易になります
- CPUにはんだをのせるにはこういったはんだペーストを使用します
- CPUにはんだをのせる為のステンシルなどのセットです
- 余分なはんだを除去するのに使用します
- 基板実装部品の取り外しや取り付けに使います
- 基板のレジストを削り回路を露出させる為に使用します
- 回路を修復するのに使います
- 今回はより便利な海外から仕入れた回路補修材を使用しています
- 6種類セットになっているので用途別に使い分け出来て便利です
- 修復した回路を保護する為に使用します
- 細かい作業になるので顕微鏡で拡大しないと精度が落ちます
あると便利なもの
- ネジが多いので分解時に電動ドライバーがあるととても楽です
- 分解時、固くて開腹・殻割りしにくい部分にはこれが便利です
- 上記の工具が大きくて使いにくい箇所にはこちらのヘラが便利です
本体の分解は記事にするほどのことではないので分解後の作業を記事にします。
1.CPUを取り外す
今回はCPU部分の故障だと踏んでいるのでCPUを取り外します。
CPUと基板の間にフラックスを流し込み、ホットエアーで熱して取り外します。
CPUの右側に大きく隙間が空いている箇所があるのでそこにフラックスを塗布して、ホットエアーで熱して少しずつCPUと基板の隙間にフラックスをしみこませていきます。
四辺全体からフラックスが漏れ出てくるくらいまでしっかりとフラックスをしみこませます。
フラックスの塗布が終わったらCPUをホットエアーで熱します。
ホットエアーの設定は450℃、風量は4~5程度にしてCPU全体が温まるように熱風を当てていきます。
しばらく熱風を当てたあと、風量を上げてさらに過熱します。
CPU部分のはんだは基板全体もある程度温まらないと溶けませんが一か所にいきなり熱を加えすぎると基板層が膨張してしまうので段階的に加熱していきます。
ピンセットでCPUを軽くつついてみて、プルプルと動くようであればCPUと基板の間のはんだが溶けている証拠です。
軽くつついて動かないようであればさらに温度を上げ、加熱を続けます。
プルプルと動かない状態で取り外そうとすると基板の回路が剥離してしまう可能性があります。
しっかりと熱してプルプル動く状態になっていることを確認してからCPUを持ち上げてください。
CPUを取り外す際は、CPUを基板上に落としてしまったりしないようにお気を付けください。
基板が熱されているのでCPUが落ちた衝撃で基板上の部品が取れたりしますし、CPU自体が故障してしまう可能性もあります。
また、CPUが非常に高温になっており、やけどの危険性もありますので十分に気を付けて作業を行ってください。
CPUを取り外したところ、回路のはんだがのる部分が2か所剥離しているのが確認出来ました。
やはり今回はCPU部分の回路故障でCPUとの通信不良が起こっていた為、ブルースクリーンになっていたようです。
基板に残っていたはんだをはんだ吸い取り線できれいに吸い取って無水エタノールを含ませた綿棒で残留したフラックスを除去してみると本来銀色になっていてはんだがのらないといけない部分が2か所、剥離してしまって茶色くなっているのがよくわかります。
この2か所の導通が正常に出来ていない為、ブルースクリーンになってしまっていたようですのでまずは回路の修復を行います。
2.回路の修復を行う
回路を修復する為に剥離した回路に繋がる部分のレジストをアートナイフで削り、内層の回路を露出させます。
(上の写真と見比べてもらえばわかると思いますが、それぞれ剥離した部分の右側に削ったことで内部の銅部分が露出している部分があります)
そこに回路補修材を使用して回路の修復を行います。
今回はAliexpressで購入した回路修復用の便利な補修材を使用しました。
amazonなど国内ではなかなか手に入らないと思いますがAliexpressで「基板 回路 補修」といったキーワードで検索すると該当製品が表示されるかと思います。
もちろんページ上部の準備するもの一覧の中にある0.1mmのエナメル線を用いて回路の修復も行えます。
今回は楽をしようと補修材を使用しましたので、どのような感じで0.1mmのエナメル線を使用して回路の修復をするかは今後、何かの形でご紹介しようかと思います。
補修材で回路の修復が終わったら溶接した補修材が取れてしまわないようにレジストを塗布して硬化させます。
使うUVライトの光度にもよると思いますが5~10分ほどUVライトを当てておけばしっかりと硬化すると思います。
これでCPUを溶接する準備が出来ましたので次はCPUのリボール作業を行います。
3.CPUをリボールする
取り外したCPUをリボールする準備が整ったので次はCPUにはんだをのせます。
まずは取り外したCPUに残ったはんだをはんだ吸収線で吸い取ります。
はんだを吸い取る際は事前にはんだ吸収線自体に少しはんだを吸い込ませてから作業をすると安全に吸い取ることが出来ます。
はんだの除去が出来たら無水エタノールを含ませた綿棒で残留しているフラックスを取り除きます。
きれいに吸い取れていたら上の写真のように溶接点が欠けることなくびっしりと並んでいると思います。
この溶接点にはんだペーストとステンシルを使ってはんだを乗せます。
リボール用の治具を使ってはんだをのせていきます。
まずは治具にCPUを設置し、その上にステンシルを乗せます。
その状態ではんだペーストをCPUに塗り込んでいきます。
溶接点部分の穴にだけはんだペーストが入り込んでいる状態になったら上からホットエアーではんだペーストを溶接します。
いきなり一か所に集中して熱を加えすぎるとステンシルが曲がってしまい、せっかく塗り込んだはんだペーストがCPUに溶接される前にステンシル側に残ってしまい、うまく溶接出来ませんのでまずはステンシル全体を温めるようにしてください。
ある程度ステンシルが温まったらそのままぐるぐるとホットエアーを回し続けてはんだペーストが溶けるまで熱し続けます。
ステンシルが曲がることなくはんだペーストが溶けて上記のようにボール状になったら作業は完了です。
ある程度冷ましてCPUを取り出すとこのようになります。
はんだのつぶが均一に丸くなっていない場合は液体のフラックスを全体に塗布して加熱するときれいにつぶが揃うと思います。
これでCPUを基板に溶接する準備が出来たので基板に乗せて加熱します。
回路の修復が終わったところは修復した部分が破損してしまわないように気を付けながら溶接点部分全体にフラックスを薄く塗布します。
フラックスを塗布し終わったらCPUを設置し、加熱していきます。
位置合わせをして450℃、風量3~4程度で全体を熱するようにハンドピースを常に動かし続けながら熱風を当て続けます。
ある程度熱してからピンセット等で軽くつついてCPUがプルプルと動く状態になればしっかりはんだ付け出来ていると思います。
溶接後の写真を撮り忘れてしまいましたがこれでリボール作業は完了です。
4.組み上げて動作確認をしてみる
回路の修復とCPUの再溶接が終わったのでうまくいっていればブルースクリーンの状態ではなくなっているはずです。
基板を筐体に組み込んで電源を入れてみます。
無事にブルースクリーン状態から復旧しました!
相当基板が歪んでいたのでどうなるかと思いましたがデータも残ったままで起動する状態まで復旧しました。
こんなに歪んでいるのに復旧させることが出来、非常に嬉しかったです。
ご依頼主様にも喜んでいただけて良かったです。
今回のように歪みがひどいNintendo Switchのブルースクリーンも状態によっては基板修理を行うことで、データをバックアップ出来る状態まで復旧させることが出来るケースもあります。
諦めていた大切なデータを取り戻せることもあるかもしれませんのでお困りの方はX (Twitter)やInstagramのDMでお気軽にご相談ください。
見積もりだけでも構いませんので連絡いただければ対応させていただきます。
修理店に出すよりも安く修理させていただけると思いますのでお困りの方はご連絡ください。
ちなみに修理料金の目安は以下の通りです。
・PS4 起動不良 10,000円~
・PS4 ICチップ交換 8,000円~
・PS4 Wi-fi / Bluetooth不良 8,000円~
・PS3 YLOD復旧 (一時的復旧) 10,000円~
・PS3 YLOD復旧 (長期的復旧) 30,000円~
・PS3 起動不良 10,000円~
・Nintendo Switch 充電不良 5,000円~
・Nintendo Switch エラーコード 8,000円~
・Nintendo Switch 起動不良 8,000円~
・Nintendo Switch ブルースクリーン 10,000円~
また、ココナラさんでも修理のご依頼を受付しております。
~Nintendo Switchのブルースクリーン修理について~ ※ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。 ※Nintendo Switch、Ninten...
日頃からブルースクリーンにならないような対策をすることをおすすめします。
純正のドックスタンドを使用していると特に本体内に熱がこもりやすく、すぐに本体が曲がってきてしまうようなので、ドックスタンドに装着出来る冷却ファンを使用したり、モニター出力する為の変換機を使用されると良いと思います。
上記のような製品を利用されるとブルースクリーンの原因となる本体が湾曲してしまうことへの対策となるのではないでしょうか。
また、Nintendo Switchも発売されてから随分経ちますので大切なデータがない場合やセーブデータお預かりサービスを利用されているのであれば買い替えも検討されても良いかと思います。
- 大事なデータがない場合は買い替えをご検討されてもいいと思います
Nintendo Switchだけではなく、PlayStationシリーズの基板修理も承っております。
今まで修理した一例の記事は以下からご覧ください。