今回は有線LAN接続が出来なくなってしまったPS3の修理のご依頼をいただきましたので基板修理させていただいた際の記録です。
このようにLANケーブルを挿しこんでも認識せず、有線LANではインターネット接続出来ない状態になってしまっています。
(Wi-Fiでのインターネット接続は問題なく出来ておりました)
また、HDMI接続ではまともに映像出力が出来ず、AVマルチケーブルを使って動作確認をしなければならない状態でした。
こちらの端末はもう遊ぶ予定はなく、新しい端末をお持ちとのことでした。
ではなぜ修理のご依頼をいただいたかというとある特定のデータを他の本体に移行する為に有線LANを使う必要があるとのことでした。
移行したいデータは本体と紐づいているデータでLANケーブルで本体同士をつなげて移行しなければならないそうです。
修理業者にも相談されたそうですが修理を断られたとのことで私にご相談いただきました。
思い出の詰まったデータを救い出したいとのご依頼主様のお気持ちを考え、やったことのない修理内容ではありましたがご依頼を受けさせていただきました。
それでは修理していきましょう。
※当記事を読んで作業の真似をされて、万が一製品が故障したり、
不慮の事故が起こっても私は責任が負えませんので全て自己責任でお願いします。
準備するもの
- 余程特殊なネジが使われていなければこれがあれば大抵の端末は分解出来ると思います
- 上記のドライバーでは大きいネジを回すのが困難な場合がありますのでこのような大きめのドライバーも1本あるといいと思います
- フラックスの除去に使います
- もちろん100均のもので十分です
- フラックスの除去に使います。
- 残れば掃除などに使えますが必要なければ小容量のもので大丈夫です
- こて先の温度が上がる速度が早く使いやすいです
- 土台に重量がありはんだごてを置いても安定します
- コンパクトで作業しやすいです
- 液体のフラックスとは違い蒸発しにくくはんだ付けが容易になります
- 交換用のイーサネットコントローラーICチップです
- 基板実装部品の取り外しや取り付けに使います
- 6種類セットになっているので用途別に使い分け出来て便利です
- 基板のはんだを吸い取る為に使用します
- 細かい作業になるので顕微鏡で拡大しないと精度が落ちます
あると便利なもの
- ネジが多いので分解時に電動ドライバーがあるととても楽です
- PS3の大きなネジを回せるパワーがあるのはこちらの電動ドライバーです
- 分解時、固くて開腹・殻割りしにくい部分にはこれが便利です
- 上記の工具が大きくて使いにくい箇所にはこちらのヘラが便利です
- 修理後はCPUとGPUにこちらのグリスを塗布すると廃熱対策になります
1.LAN端子を交換する
今回はPS3にLANケーブルを挿しても認識しないとのことですのでまずはLAN端子の交換を行ってみたいと思います。
こちらがLAN端子の溶接部分です。
はんだで溶接されているのでまずははんだを吸い取ってしまいます。
フラックスをしっかりと塗布してはんだごてとはんだ吸収線を用いてある程度はんだを吸い取りました。
そして上からホットエアーで加熱しながらLAN端子を引っ張るとこのようにLAN端子が取れます。
エタノールを含ませた綿棒で残ったフラックスをきれいに拭いておきます。
あとはジャンク端末から取り外したLAN端子を溶接して作業は完了です。
交換前のLAN端子には特に破損は見られませんでしたが果たしてLAN端子の交換を行ったことでLANケーブルを認識するようになっているでしょうか。
2.動作確認する
LAN端子の交換が完了したので組み立てて動作確認してみます。
結果は残念ながら修理前と何も変わらず、LANケーブルを挿してもこの画面から先に進むことはありませんでした。
次に考えられるのはICチップ周りのコンデンサやチップ抵抗の溶接不良がこの不具合を起こしている可能性です。
ということで次はICチップ周りのチップを全て再溶接していきます。
3.ICチップ周りのチップコンデンサなどを再溶接する
LAN端子の近くにあるICチップの周りにはたくさんのチップコンデンサとチップ抵抗が溶接されています。
一気に取り外すとどこのチップだったかわからなくなりそうなので少しずつ取り外しと再溶接を行っていきます。
取り外したいチップ部分に少しフラックスを塗布して加熱し、ピンセットでつまんで取り外します。
少しだけはんだごてではんだを足して取り外したチップを再溶接します。
この作業をICチップ周りのチップ15個全て繰り返し行いました。
作業結果は変わらず、LANケーブルを認識しませんでした。
あと出来ることはICチップの交換しかありません。
が、調べてみても交換した事例が全然見つかりません。
もしかするとCPUと紐づいていて交換するにはCPUの情報をICチップに書き込まないといけないのでは?と色々調べてみましたが全く情報が出てきませんでした。
交換した事例がないということは安易に交換してしまうと起動しなくなってしまったり基板が故障してしまうのでは...と不安になり、なかなか踏み出せずにいました。
ご依頼主様に提案するにも作業した結果起動しなくなってしまったりしては申し訳ないのでまずはジャンク端末を用意してICチップを交換するとどうなるか検証することにしました。
起動して有線LAN接続が出来るジャンク端末を用意し、そのあたりに転がっていたジャンク基板から上記のイーサネットコントローラICチップを取り外し移植してみました。
すると交換後も特に不具合なく有線LAN接続出来るではありませんか。
これはもしかするとICチップを交換することで有線LAN接続出来るようになるかもしれないと思い、改めて見積もりをさせていただきました。
ご依頼主様も藁にも縋る思いで私に依頼していただいたので是非やってくださいとおっしゃっていただけました。
復旧するかどうかはやってみないとわからない状態でしたがわずかな希望が見えましたのでこのまま作業させていただくことになりました。
4.イーサネットコントローラーICチップを交換する
今度はこのイーサネットコントローラーICチップを交換していきます。
ICチップの周りにフラックスを塗布して加熱していきます。
今回は基板が大きく、加熱しても基板に熱が奪われてしまうので500℃、風量は6~7程度で加熱していきました。
ある程度加熱した後、ピンセットでつまみ上げるとICチップを取り外すことが出来ました。
今回は交換用の部品が手元になかった為、ジャンク基板から取り外したICチップを溶接しました。
しっかりと位置を合わせて取り外したときと同様の温度と風量で加熱し、溶接しました。
無水エタノールを含ませた綿棒で残ったフラックスをしっかりと掃除するとこのようになりました。
目視ではしっかりと溶接出来ているように見えます。
では基板を筐体に戻して動作確認してみます。
5.動作確認する
修理前はLANケーブルを挿してもLANケーブルを接続してくださいという画面から先に進みませんでしたがICチップを交換したことで復旧したでしょうか。
初めて経験する故障内容なのでかなりドキドキしながら電源を入れてみましたがちゃんと起動してくれました。
修理前はこの画面から先に進みませんでしたがLANケーブルを挿すとどうなるでしょうか。
なんと画面が切り替わり、ネットワーク接続し始めました。
さらに画面が切り替わり、インターネット接続有効と表示されています。
これは修理大成功じゃないでしょうか。
さらに接続テストも行ってみます。
接続テストも成功し、無事に復旧しました!
これでご依頼主様の大切なデータも他の端末に移行出来るようになったのではないでしょうか。
初めてやる修理内容にも関わらず、ご依頼いただいたご依頼主様には感謝の気持ちでいっぱいです。
やったことのない修理が成功するのは非常に嬉しく、これでご依頼主様の大事なデータが守られたと思うとさらに喜びがわいてきます。
(後日、ご依頼主様から無事にデータ移行が始まったとのご報告をいただきました)
今回のように諦めていたデータを保存することが出来るかもしれませんので同じような故障でお困りの方はお声がけいただければ修理させていただきますのでお気軽にお問い合わせください。
- 古い端末なので買い替えをご検討されてもいいと思います
修理のご依頼・お見積もりはX (Twitter) ・InstagramのDMで受け付けております。
見積もりだけでも構いませんので連絡いただければ対応させていただきます。
修理店に出すよりも安く修理させていただけると思いますのでお困りの方はご連絡ください。
ちなみに修理料金の目安は以下の通りです。
・PS4 起動不良 10,000円~
・PS4 ICチップ交換 8,000円~
・PS4 Wi-fi / Bluetooth不良 8,000円~
・PS3 YLOD復旧 10,000円~
・PS3 起動不良 10,000円~
・Nintendo Switch 充電不良 5,000円~
・Nintendo Switch エラーコード 8,000円~
・Nintendo Switch 起動不良 8,000円~
・Nintendo Switch ブルースクリーン 10,000円~
故障内容は今回のように上記以外にも対応出来るものがございますのでなんでもお気軽にお問い合わせください。
ココナラさんでも修理のご依頼を受け付けておりますのでDMで直接やり取りするのが不安な方はココナラさんからご相談ください。
(ココナラさんでは手数料の関係上少し割高な金額設定となっております)
ココナラは以下から登録をお願いします。
当たり前ですが見積もりは無料でさせていただいておりますのでちょっとしたことでもお声がけください。
今まで対応させていただいた修理内容も記事にしております。
修理に参考にしていただいたり、同様の故障事例がないか探してみたりしていただければと思います。
ご自分で修理された結果故障してしまった端末のリカバーも何度か経験がございますのでそのようなご依頼もお受けいたします。
それでは皆様のご依頼お待ちしております。